空間設計において、天井の高さを意識することで、独特の体験を生み出すことができます。今回は、天井高をあえて低くしたり、勾配天井を導入することで、目線より上の意識を変化させ、空間が「広がる」「迫ってくる」感覚を演出しました。これはスキップフロアとは異なる、新しい面白さを感じさせる要素です。
窓から広がる勾配天井の効果
この住宅では、窓の高さをH1800に設定し、そこから3.5寸の緩やかな勾配で天井が広がっていきます。窓に向かって歩くと、徐々に天井が低く迫ってくるように感じられ、空間の緊張感を体験できます。しかし、振り返ってキッチン方向を向いたときには、逆に天井が広がり、まるでメガホンのように視界が開けたような広がりを感じられるのです。この対比が、空間に動きと奥行きを与えています。
落ち着きをもたらす1650mmの天井高
天井の一番低い部分は1650mmに設定されています。この低さがもたらすのは、閉塞感ではなく、むしろ心地よい落ち着きです。窓があり視界が抜けているからでしょうか、壁に腰かけてぼーっと過ごしたくなります。勾配天井だからこそ、低い天井が重苦しく感じることはなく、包まれるような安心感が生まれます。
照明による空間の演出
さらに、この落ち着いた空間を強調するため、照明は意図的に控えめにしています。過度な明るさを避けることで、勾配天井と相まって、色気のある、静かで深みのある空間が演出されています。光の加減によって、天井の高さや角度がより印象的に感じられ、住宅全体にドラマティックな空気が漂うのです。
天井の高さや勾配をデザインに取り入れることで、空間に新しい動きや感覚が生まれ、居心地の良いリズムを感じることができます。この住宅は、視覚的な広がりと心地よい落ち着きの両方を兼ね備えた空間体験をつくりだしています