空間を少しだけドラマチックに
住宅の天井は高い方がいい。たくさんの家を見てきた人や設計に関わる人なら、そう感じるのが一般的かもしれません。高い天井は視界が開けて、空間が広く感じられるからです。事実、住宅の設計においても標準の2400mmをさらに高くしてほしいという声が多く寄せられます。もちろん賛成なのですが、一部天井を「あえて」低くしてみるのはどうでしょうか。
西宮浜のリノベーションで提案したアイデアは「扉の高さから天井をぐっと下げる」というプランでした。リビング・ダイニング・キッチン、合わせて30畳の大空間に入るその瞬間、1950mmの低い天井が視界に入り、すぐに2400mmの天井高が目の前に広がる、”気持ちのよい広がり”を演出できるのではないかと考えたのです。
天井がまるっと解決
この「低い天井」を使った仕掛けにはもう一つの狙いがありました。リビングとアトリエの間に明確な壁はなくとも、あえて低く設定した天井が、空間にさりげない区切りを生み出します。30畳の空間を歩くと、天井の高さが緩やかに変わる。そんな変化が、空間全体にメリハリを与え、ただ広々としているだけではなく、心地よいリズムを感じさせてくれるのです。
低い天井はただの「仕切り」ではありません。単に下げるだけだともったいない気がしますよね。今回は天井を下げた分、上部にロフトスペースをつくりました。キッチンのダクトを隠しながら収納スペースを確保する。つまり「空間にスパイスを」「収納を増やす」「余計なダクトを見せない」ということを天井を下げるというアイデアで解決してしまったのでした。
天井を下げたことで、思いがけず多くの効果が生まれクライアントも大満足。天井高が変わるこの場所が子供の遊び場になっているようです。