視線が生む広がり
家の広さを語るとき、つい「帖数」に頼りがちですよね。
「LDKは20帖以上ほしい」という希望はよく耳にします。でも、狭小地に家を建てる場合、物理的にその面積を確保するのはなかなか大変です。
けれど、「広さ」というのは数字だけで決まるものではありません。視線の抜けを工夫することで、「〇帖」という数字以上の広がりを感じられる空間をつくることができるのです。
22帖以上に感じるLDK
この家のLDKは約22帖。けれど、実際にこの空間に足を踏み入れると、それ以上の広がりを感じさせてくれます。
リビングに入るとまず目に飛び込んでくるのは、大きな窓。天井は奥に向かって低くなる勾配天井となっていて、自然と視線が窓の向こうへと導かれます。その先には、窓越しの景色が広がり、空間の「奥行き」がぐっと深まる感覚。
図面やCGでシミュレーションを重ねてはいましたが、実際に体験するとその広がりは想像以上。窓がつくる抜け感のおかげで、このLDKには数字には表せない開放感があります。
天井がつくる奥行き
室内を振り返ると、今度は勾配に沿って高くなる天井が目を引きます。その天井はロフトへと続き、極力照明器具を設置せず、すっきりとしたデザインに。余計な要素を省いたことで、天井の高さや空間の広がりをより一層感じることができます。
この家では「視線が行き止まる場所」に開口部を配置することを意識しました。視線を窓で抜けさせるだけでなく、そこに光が差し込むことで、空間全体がさらに広がりを持つのです。
小さな窓が生む楽しさ
この家のキッチンに設けた小さな室内窓。お隣さんのミカンの木がちょうど見える位置に配置しました。ほんの小さな窓ですが、この窓を通して、季節の変化を感じたり、ふと視線を向けたときにミカンの実が揺れているのを見つけたりと、日常に小さな楽しみを添えてくれます。
窓はただ外を見るためのものではなく、空間の広がりや心地よさをつくるデザインの大切な要素。
「視線が抜ける場所には窓をつくる」。そんなシンプルな考え方が、この家の豊かな空間づくりを支えています。