打合せの中で大切にしていることがあります。それはプロセスを共有すること。
「この形が一番いいです」と提案して、そのまま採用されるのもクールですが、クライアントと一緒に悩み、考えながら案をつくり上げていく過程を共有したいと考えています。そうすることで、クライアントとの間に同じ思考プロセスを共有でき、家づくりを一緒に楽しむことができると思っています。
今回は、寺本邸のプロジェクトでどのように進めていったのか、その試行錯誤のアイデアを公開します。
このプロジェクトでは、大きな窓や勾配天井、ロフトのデザインが決まった後、内部空間の見せ方が大きなテーマになりました。特に耐力壁の設置が避けられなかったため、それをどのようにデザインに組み込むかが課題でした。
①構造を現しにした案
木の構造をそのまま見せることで、素材感を強調した案です。木の質感が好きな方には好まれますが、好みが分かれるデザインです。
②白い勾配天井と梁を取り入れた案
天井には白いパネルを貼り、リビングには梁と柱を取り入れました。クライアントに喜んでいただいたのですが、「埃がね、、、」
プレーンな形に戻します。このままだと20帖のただ広いワンルームという印象で、どうしても空間の豊かさに欠けてしまいます
③耐力壁をキッチン前に設けた案
キッチン前に大きな壁を設置することで、空間の印象を大きく変える提案です。木仕上げにすると柔らかい印象、スレートにすると重厚感が出ます。
④木を植える案
空間に木を植えることで店舗のようなデザインに。突拍子も無いデザインもCGだと楽しいものです。採用はなくても施工方法と見積書も準備だけはしていました。
⑤耐力壁で空間を緩やかに区切る案
最後に提案したのが、耐力壁をリビングとダイニングの間に設け、空間を緩やかに分ける案です。これにより、広々とした空間に程よい分割を加え、密度の異なる豊かな空間づくりをつくりたいと考えました。
実際の打合せではこの5つの提案を今と同じ順番でCGを動かしながら提案しています。シミュレーションしながら進めることで他の案もあるのではないか、と迷うこともありませんしスムーズに進めることができます。
ちなみにこの時にクライアントの持っていた鳩時計をCGに入れていることがポイント。提案時に場がほっこりしたのは言うまでもありません。こうやって空間を一緒になって作り上げるのが建築家とつくる住宅の楽しさですよね。